天売島は、羽幌港の西北西約28 kmにある島で、面積は5.47 km²である。1,2天売島では8種の海鳥が繁殖し、国内でウミガラスとウミスズメが繁殖するのは天売島だけとされる。ウトウはおよそ30万つがいと推定されている。1ウミガラスの飛来数は、1960年代の推定8000羽から、2000年以降は30羽前後まで減少した。繁殖つがいは2005年に一度0になったが、2025年には最低37つがいが確認されている。3天売島の西岸は、1938年に天然記念物「天売島海鳥繁殖地」に指定された。4
天売島(テウリトウ)

基本情報
| 名称 |
|
|---|---|
| 場所 | 北海道 羽幌町 |
| 人口 | 227人(2026年)6 |
| 面積 | 5.47 km²7 |
| 最高標高 | 184.5 m8 |
| 座標 | 北緯 44.4246、東経 141.31421 |
| アクセス | 定期航路あり9 |
人口
398102005
366102010
313102015
259112020
22762026
位置
国土地理院国土地理院 / 海岸線:VMAP0
自然・地理
- 天売島は、羽幌港の西北西約28 kmにある。1東隣の焼尻島とは、約3.5 kmの武蔵水道を挟んで向かい合う。12天売島は西部が高く(最高標高184.5 m)、海の作用でできた平坦面が階段状に並ぶ5段の海成段丘をつくりながら、東へ緩く傾く。海岸には海蝕崖が多い。13段丘面は、最も高いA面が160〜170 m、最も低いE面が20〜40 mにある。段丘は更新世の地層である更新統とされるが、正確な時代は特定されていない。14北西部には、高さ100 mを超える海食崖が続く。西南端の赤岩には、火山の噴出物の角ばった岩片が固まった赤褐色の火山角礫岩が発達する。1
- 天売島は、安山岩質の溶岩と火山角礫岩が交互に重なってできており、地層は東へ5〜10°傾く。化石が見つかっていないため、年代は新第三紀の地層である新第三系の中部〜上部と推定され、南の暑寒別岳などと一連の火山活動によるものと考えられている。15
- 天売島では8種の海鳥が繁殖し、その数は合計約60万羽とされる。ウトウはおよそ30万つがいと推定され、世界最大級の繁殖地とされる。1
- 1938年に天然記念物に指定されたときの解説文は次のとおりである。官公庁の資料であるため原文を掲げる。「天賣島ノ西岸奇岩怪礁ノ屹立スル断崖勝景ノ地ニアリ毎年三月頃ヨリ八月ニ亙リ多數ノうみがらす、けいまふり、うとう、うみねこ等ノ海鳥渡來シテ偉觀ヲ呈ス うみがらすハ岩角ニけいまふりハ岩ノ間隙ニ、うとうハ地中ニ穴ヲ穿チ又うみねこハ地上ニ巣ヲ營ミ蕃殖ス蓋シ海鳥蕃殖地トシテ我國有數ノモノナリ」。4
- ウミガラスの飛来数は、1960年代に8000羽と推定されたが、1970年代には500〜1000羽、1980年代には130〜600羽、1990年代には20〜80羽と減り、2000年以降は30羽前後となった。つがい数は2005年に一度0となり、巣立ちヒナ数も2010年に0羽となった。3減少の要因は、サケ・マス漁網や底刺網への絡まりと、オオセグロカモメ・ハシブトガラスによる捕食と考えられている。16
- 環境省は保護増殖事業として、繁殖地の屏風岩と赤岩対崖に、鳥の模型であるデコイと鳴き声を流す音声装置を置き、繁殖個体を呼び寄せている。赤岩対崖では、2011年から捕食者の捕獲を行っている。2025年度は、最大飛来数が過去最多の135羽、つがい数が最低37、巣立ちヒナ数が推定24羽だった。3
- 2017年の調査では、海上で数えたケイマフリの最大数は682羽で、過去13年間で最も多かった。ただし、1985年に推定された800羽超には戻っていない。ウミネコの営巣数は、1979年の23,274巣から2014年には693巣まで減った。171980年代と比べると、ウミネコは大幅に減り、ウトウとオオセグロカモメは増えている。1
- 天売島は国指定天売島鳥獣保護区に指定されており、その種別は集団繁殖地である。指定は、2011年10月1日から2031年9月30日までを期間として更新された。18天売島は、暑寒別天売焼尻国定公園に含まれる。1964年に道立自然公園となり、1990年8月1日に国定公園に指定された。19,12
- 羽幌町は、2012年3月12日に「天売島ネコ飼養条例」を公布し、4月1日に施行した。条例の対象は天売地区だけで、目的には海鳥の繁殖への悪影響を防ぐことが含まれる。20
島のいろいろ
- 松浦武四郎が1872年に刊行した『西蝦夷日誌』には「テウレ」の表記が見える。島の図には「テウレシリ」の名とともに、周囲を10 km余りとする書き込みがある。21
- 天売村は1876年に置かれ、1906年に北海道独自の町村制度による二級町村となった。1955年には羽幌町へ編入された。19
- 1898年の『日本水路誌』第5巻は次のように記す。焼尻島は苫前埼の北西約22 kmにあり、天売島はその西方の約3.7 kmの水道を隔てた島である。両島の周回はそれぞれ約11 kmである。戸数は両島ともそれぞれ約150で、漁業が9割を占め、野菜は自家用にとどまる。両島には錨地があって近海を通る船の避難所となり、越後の近海を通る船にとっての佐渡島のようだ、としている。22
- 天売島では、漁業が主な産業とされる。231910年の『天塩国要覧』は、天売村を、周囲約12 kmの島に1,500余人が住み、漁業が最も盛んな村と記している。24
- 『天塩国要覧』の沿革によれば、1786年ごろ、栖原氏が天塩沿岸に勢力を張ったときに天売もその支配下に入った。栖原氏は、隣の焼尻島の「アイノコタン」に番所を置いて両島を監督した。1880年に焼尻村戸長役場ができると、天売もその管轄に入った。1902年9月に両島は分かれて自治を始め、1906年に北海道二級町村制を施行したとする。24
- 天売島の南西の海にあるジャブジャブソリは、排他的経済水域の外縁を根拠付ける離島の一つで、2011年5月に政府が地元の呼び名にもとづいて、地図・海図に載せる名前を決めた。同島は、政府が保全・管理する国境離島473島の一覧に、「天売島南西方」の島として掲載されている。25,26
アクセス
年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1786(天明6) | 六代栖原角兵衛が天売・焼尻の漁場請負を命じられる19 |
| 1792(寛政4) | 天売沖で鰊漁のアイヌ23人と松前の漁夫1人が遭難19 |
| 1859(安政6) | 天売・焼尻が庄内藩の支配地となる19 |
| 1876(明治9) | 苫前郡が5村に区画され、天売村ができる19 |
| 1879(明治12) | 焼尻村・天売村の戸長役場が焼尻に置かれる(『天塩国要覧』は明治13年とする)19,24 |
| 1902(明治35) | 天売村戸長役場が置かれる。天売沖で鰊漁船60余隻が難破し、228名が溺死19 |
| 1906(明治39) | 天売村が二級町村となる19 |
| 1908(明治41) | 天売沖で鱈釣り船34隻が難破し、229名が溺死19 |
| 1938(昭和13)-08-08 | 天然記念物「天売島海鳥繁殖地」に指定4 |
| 1955(昭和30) | 天売村が羽幌町に編入合併(月日は要調査)19 |
| 1964(昭和39) | 天売・焼尻が道立自然公園となる19 |
| 1990(平成2)-08-01 | 暑寒別天売焼尻国定公園に指定12 |
| 2005 | ウミガラスのつがい数が0となる3 |
| 2012(平成24)-04-01 | 天売島ネコ飼養条例を施行20 |
| 2024(令和6)-04-15 | 約70年ぶりに天売島でニシンの群来を確認19 |
| 2025 | ウミガラスの最大飛来数135羽、つがい数は最低373 |
注
- 1 環境省『国指定天売島鳥獣保護区 天売島特別保護地区 指定計画書(案)』、2011年。
- 2 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年、82頁。
- 3 環境省北海道地方環境事務所『報道発表「令和7年度 天売島におけるウミガラスの繁殖結果について」』、2025年。
- 4 文化庁『文化遺産オンライン「天売島海鳥繁殖地」』、1938年。
- 5 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 6 羽幌町 町民課『羽幌町の人口と世帯数(令和8年度)』、2026年。
- 7 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年(2026年の値)。
- 8 秦光男『5万分の1地質図幅説明書「焼尻島」(旭川-第28号)』、1960年(1960年の値)。
- 9 北海道離島航路確保対策協議会(羽幌航路)(推定)『北海道離島航路確保対策協議会(羽幌航路) 地域公共交通確保維持改善事業 概要』、令和6年度の事業実績と令和7年度離島航路確保維持計画案を扱う。
- 10 羽幌町 地域振興課『町勢要覧資料編 2026年版(はぼろ)』、2026年。
- 11 総務省統計局『令和2年国勢調査 小地域集計(町丁・字等)男女別人口総数及び世帯総数(北海道)』、2020年。
- 12 北海道 環境生活部『暑寒別天売焼尻国定公園』。
- 13 秦光男『5万分の1地質図幅説明書「焼尻島」(旭川-第28号)』、1960年、3頁。
- 14 秦光男『5万分の1地質図幅説明書「焼尻島」(旭川-第28号)』、1960年、19–20頁。
- 15 秦光男『5万分の1地質図幅説明書「焼尻島」(旭川-第28号)』、1960年、4–11頁。
- 16 環境省『ウミガラス(保護増殖事業の対象種)』。
- 17 環境省北海道地方環境事務所『資料2 平成29年度ケイマフリ等海鳥調査の実施状況』、2017年。
- 18 環境省北海道地方環境事務所『天売島鳥獣保護区 更新計画書』、2011年。
- 19 羽幌町『まちのあゆみ』。
- 20 環境省『猫の保護(愛護)及び管理に関する要綱等の概要(中央環境審議会 動物愛護部会資料)』、2012年。
- 21 松浦武四郎『西蝦夷日誌 5・6編』、1872年、デジタル版61コマ。
- 22 水路部『日本水路誌 第5巻』、1898年、112頁。
- 23 羽幌町『羽幌町商工観光概要 平成27年度版』、2015年、25頁。
- 24 留萠実業青年会『天塩国要覧』、1910年、デジタル版185コマ。
- 25 内閣府 総合海洋政策推進事務局(総合海洋政策本部)『排他的経済水域(EEZ)外縁を根拠付ける離島の地図・海図に記載する名称の決定』、2012年。
- 26 内閣府 総合海洋政策推進事務局『我が国が現に保全・管理を行っている国境離島473島の一覧(令和6年8月9日時点)』、2024年。
- 27 羽幌町 総務課『羽幌町への交通アクセス』。
参考文献
- 環境省『国指定天売島鳥獣保護区 天売島特別保護地区 指定計画書(案)』、2011年。
- 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年。
- 環境省北海道地方環境事務所『報道発表「令和7年度 天売島におけるウミガラスの繁殖結果について」』環境省、2025年。
- 文化庁『文化遺産オンライン「天売島海鳥繁殖地」』、1938年。
- 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 羽幌町 町民課『羽幌町の人口と世帯数(令和8年度)』羽幌町、2026年。
- 秦光男『5万分の1地質図幅説明書「焼尻島」(旭川-第28号)』地質調査所、1960年。
- 北海道離島航路確保対策協議会(羽幌航路)(推定)『北海道離島航路確保対策協議会(羽幌航路) 地域公共交通確保維持改善事業 概要』国土交通省 北海道運輸局(掲載)、令和6年度の事業実績と令和7年度離島航路確保維持計画案を扱う。
- 羽幌町 地域振興課『町勢要覧資料編 2026年版(はぼろ)』羽幌町、2026年。
- 総務省統計局『令和2年国勢調査 小地域集計(町丁・字等)男女別人口総数及び世帯総数(北海道)』、2020年。
- 北海道 環境生活部『暑寒別天売焼尻国定公園』北海道。
- 環境省『ウミガラス(保護増殖事業の対象種)』。
- 環境省北海道地方環境事務所『資料2 平成29年度ケイマフリ等海鳥調査の実施状況』環境省、2017年。
- 環境省北海道地方環境事務所『天売島鳥獣保護区 更新計画書』環境省、2011年。
- 羽幌町『まちのあゆみ』。
- 環境省『猫の保護(愛護)及び管理に関する要綱等の概要(中央環境審議会 動物愛護部会資料)』、2012年。
- 松浦武四郎『西蝦夷日誌 5・6編』、1872年。
- 水路部『日本水路誌 第5巻』、1898年。
- 羽幌町『羽幌町商工観光概要 平成27年度版』、2015年。
- 留萠実業青年会『天塩国要覧』、1910年。
- 内閣府 総合海洋政策推進事務局(総合海洋政策本部)『排他的経済水域(EEZ)外縁を根拠付ける離島の地図・海図に記載する名称の決定』内閣府、2012年。
- 内閣府 総合海洋政策推進事務局『我が国が現に保全・管理を行っている国境離島473島の一覧(令和6年8月9日時点)』内閣府、2024年。
- 羽幌町 総務課『羽幌町への交通アクセス』羽幌町。
- 国土地理院『地理院タイル「全国最新写真(シームレス)」(seamlessphoto)』。